サンタの挑戦
第2回 アッ!という間の1カ月

のどかな午後。いまボクはクルマを運転している。あれ、クリーニング店はもう辞めたのかって?違うんだ。ボクがお店を手伝い始めたら、ルート集配の若い人が安心して辞めてしまったので、ボクがその代わりってわけ(他で働く方が高給らしい)。
集配車はその人の持ち込みだったから、ボクの愛車を下取りに出して、ワンボックス車を購入した。なんと、父は運転免許を持っていない(当然、母も)。社宅から持ち帰ったボクの車はスポーツカー。集配に使えない、しかし一家にクルマは2台いらない。

助手席には、母。「あたし、一度ドライブに行きたかったのよ」
市内の取次店を5軒回るだけなのに、楽天家である。
「父さんも無茶だよ。ボクがいなかったらタクシー頼んで集配してたかもよ」と恩着せがましいボク。
「ほんとね。せめて長男のアタロウが継いでくれてたらね」違うでしょ、母さん!

「母さん、カナエ姉さんの店に着いたよ」
この1号店は2階建ての貸家で、元はスナックだった。姉は住み込みで週6日働いている。売上は本店を除き、5店舗中ナンバーワン。いまや本店を凌く勢いすらある。
元銀行の受付嬢だけあって、応対の良さはピカイチ、来客の多さもうなずける(決して美貌ではない)。

「いらっしゃい・・ああ、母さんにサンタ。今日はレンタカーじゃないの?いいわね、母さんに新車を買ってもらって!」
この脳天気さは、母似だ。
「買ってもらったんじゃないよ、ボクが愛車を売って買ったんじゃないか!」
「それより、早く積んで帰ってね。セールもしてないのに、こんなに集まったのよ」
そう、最初に姉の店を集配しないと他の店での積み降ろしが大変なんだ。他の店にも奮闘してもらわないと!

*** 親父のホンネ ***
ふん、昔は運転免許を取りに行く暇なんかなかったんだ!見習いのサンタには、丁度いい仕事じゃないか。

サンタの挑戦

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